Anti-Fraud Edge AI

GenAI Guardian — プロジェクト紹介

完全オフラインで動作するエッジ AI 特殊詐欺検知システム

このページの目次

1. GenAI Guardian とは

GenAI Guardian は、完全オフラインで動作する特殊詐欺検知エッジ AI システムである。

インターネット接続を一切必要とせず、音声・映像データは端末の外に出ない。

高齢者が自宅で電話を受ける——特殊詐欺の被害はこの極めてプライベートな空間で発生する。この空間にカメラやマイクを導入する以上、そのデータが外部に送信される仕組みであれば、利用者も家族も安心できない。どれだけ「データは暗号化されている」「サーバーは安全である」と説明しても、通信経路が存在する限り、不安は解消されない。GenAI Guardian は、そもそも通信経路を必要としない設計でこの問題を解決している。さらに、システムは電話と連動し、通話が発生したときにのみ起動する。常時監視ではない。

設計原則 内容
通信 不要。完全オフラインで動作
データ送信 なし。音声・映像データは端末外に出ない
起動条件 電話と連動。通話時のみ起動(常時監視ではない)
端末 小型カメラ(マイク・スピーカー搭載)+ 専用小型端末
プライバシー 非侵入式。利用者の生活を記録・蓄積しない

高齢者宅への導入において、インターネット環境の有無も通信費用も障壁にならない。

犯罪心理学の知見と AI 技術を融合し、詐欺犯が使う「心理的支配の構造」を、通話音声の文脈とカメラ映像の動作パターンの両面からリアルタイムに検知する。

機能 特徴
文脈 Token 検知 通話音声のリアルタイム文脈分析 詐欺防止専用。文脈認識型
人間動作分析 緊迫環境下の動作変化検出 ローカル AI による動態認識
データ基盤 多言語・多地域の反詐欺データ 約 600 時間の音声、約 40 億文字のテキスト

2. 社会課題:特殊詐欺被害の深刻化

日本の現状

認知件数 被害額 出典
2024 21,043 件 717.6 億円 警察庁
2025 27,758 件(+31.9%) 1,414 億円(過去最高) 警察庁

2025 年、特殊詐欺の被害額は前年比約 2 倍に急増し、過去最高を更新した(警察庁発表)。SNS 型投資詐欺・ロマンス詐欺を含めた合計被害額は 3,241 億円を超えている。

グローバルな脅威拡大

この問題は日本に限らない。2026 年 1 月、米国の反詐欺専門家 Frank McKenna 氏は年次レポート(2026 Fraud Predictions)において、AI 駆動の詐欺が「ブレーキなき時代」に入ると警告した。

  • 2025 年の世界全体の詐欺被害は 1 兆ドルを超えた
  • ディープフェイク攻撃は前年比 3,000% 増加
  • 世界の成人の約 70% が何らかの詐欺被害を経験
  • AI 自動化により、少人数で毎日数万人規模の標的に攻撃可能な「詐欺工場」が出現しつつある

AI の進化は、詐欺の手口を日々高度化させている。対策もまた、AI によって進化しなければならない。

高齢者被害の構造

2024 年の統計では、特殊詐欺の被害者のうち 65 歳以上が 65.4% を占める(警察庁)。2022 年時点では 86.6% であり、近年は若年層にも被害が拡大しているが、高齢者が依然として被害の中心にある。

日本は世界で最も高齢化が進んだ社会であり、高齢者人口は今後も増加が見込まれる。特殊詐欺被害の構造的リスクは、人口動態上、拡大の方向にある。

特殊詐欺の被害イメージ

既存対策の限界

現在の主な対策——啓発活動、迷惑電話フィルター、通話録音——は、いずれも通話が始まった後の対応に留まるか、被害者自身の判断力に依存している。

しかし、詐欺犯は被害者の判断力そのものを奪うことで犯行を成立させる。被害者が「これは詐欺かもしれない」と判断できる状態であれば、そもそも被害は発生しない。判断力を失った状態の人間を検知する仕組みが必要である。


3. この課題への社会的関心

AI × 犯罪心理学による特殊詐欺対策

AI と犯罪心理学を融合した特殊詐欺対策は、すでに日本社会で大きな関心を集めている。

富士通株式会社、東洋大学、兵庫県尼崎市の三者は 2022 年から共同研究を実施し、「コンバージングテクノロジー」(収斂技術)による特殊詐欺防止に取り組んでいる。2025 年 5 月には詐欺検知精度 82% を達成し、日本の主要メディアが報道した。

時期 マイルストーン
2022 年 3 月 共同研究開始。第 1 回実証実験(尼崎市役所)
2022 年 9 月 被害者の心理状態に関係する 11 要素を特定。日本応用心理学会で発表
2023 年 10 月 日本心理学会にて「コンバージングテクノロジー研究会」採択
2023 年 11 月 生成 AI を活用した特殊詐欺訓練ツールを開発。尼崎市で体験会実施
2024 年 11 月 高齢者宅 22 戸に機器を設置し日常環境での検証を実施
2025 年 5 月 詐欺検知精度 82% を達成

この取り組みは、富士通・大学・自治体・全国紙と、多方面から公式に発信されている。

GenAI Guardian との接点

この研究を主導する東洋大学の教授は、GenAI Guardian の研究者の修士課程における指導教員である。研究者自身もコンバージングテクノロジー研究会に参加し、研究発表の聴講や議論に加わってきた。

GenAI Guardian は、同じ社会課題に対して異なるアプローチで取り組んでいる。

比較軸 富士通共同研究 GenAI Guardian
検知手法 ミリ波センサー + 生理反応 文脈 Token 検知 + 人間動作分析
重点 ハードウェアセンシング ソフトウェア・エッジ AI
デバイス 専用センサー設置 汎用カメラ + 小型端末
通信 完全オフライン
共通理念 非侵入式・プライバシー保護 同左

同じ目標に対する異なる研究路線として、相互補完の可能性がある。


4. アプローチ

4.1 文脈ベース Token 検知 — 従来手法との違い

通話音声をリアルタイムで分析し、詐欺の可能性を判定する。

従来のキーワードベースのシステムは、「お金」「振込」「警察」といった特定の単語が出現した時点で警報を発する。しかし、これらの単語は日常会話でも頻繁に使われる。結果として大量の誤報(False Positive)が発生し、利用者は警報を無視するようになる。

GenAI Guardian の検知は、これとは異なるアプローチを取る。

  • 個々の単語ではなく、会話の流れ全体を文脈として読解する
  • 恐怖の喚起、時間的切迫の演出、社会的孤立への誘導——といった心理的支配の構造が会話の中に成立しているかどうかを判定する
  • 特定の単語が出現しただけでは反応しない。それらの単語が、操作的な文脈の中に組み込まれて初めて検知する

この文脈認識により、誤報問題を原理的に抑制する。

4.2 緊迫環境下の人間動作分析 — 高齢者に有効な理由

カメラ映像のローカル AI 分析により、通話中の被害者の動作変化を検知する。

人間は心理的に追い詰められた状態(恐怖、焦り、混乱)において、特定の動作パターンを示すことが知られている——落ち着きのない動き、反復的な動作、通常と異なる姿勢の変化などである。

この検知は、高齢者に対して特に有効性が高い。高齢者は日常生活における動きの変動幅が若年者と比較して小さいため、異常な動作パターンが発生した際のコントラストが大きく、検知の信頼度が構造的に高くなる

映像分析はすべて端末上のローカル AI で処理され、映像データは外部に送信されない。


5. 研究者の背景

刑事法廷での実務経験

来日前、中国の刑事法廷において 2 年以上にわたり実務に従事した。

その中で、中国全土を震撼させ東南アジアにまで波及した大規模特殊詐欺事件の審理・判決に携わった。通常の刑事事件の判決書は 4〜6 ページであるが、当該事件の判決書は 30 ページ以上に及んだ。

刑事法廷で扱われるすべての情報は、最終的な判決書を除き、厳格な守秘義務の下にある。この経験を通じて、詐欺犯罪の心理・手口・組織構造を、司法手続きの内側から理解している。

学術研究

2021 年、修士課程において「悪徳商法や詐欺に対する脆弱性と不安感情の関連について」を研究テーマとした。犯罪心理学の観点から、詐欺被害に対する人間の脆弱性の構造を分析した。

在日経験

来日から 10 年以上が経過している。日本語での研究・実務が可能であり、日本社会の構造、高齢化の実態、特殊詐欺の被害パターンに対する理解は、長期の在日生活を通じて培われたものである。


6. データ資産

総量指標

指標 数値
データセット数 30
総録音時間 約 600 時間(24 時間休まず聴いて約 1 ヶ月)
総テキスト量 約 40 億文字以上(書籍換算 約 40,000 冊)
対象言語 日本語・中国語・英語・韓国語(4 言語)
データ地域 日本・中国・米国・韓国・国際(5 カ国/地域)
データ期間 2015 年〜 2025 年(約 10 年間。中核は 2022〜2025 年)

分類別データ一覧

# ソース種別 地域 言語 規模 概要
1 大手通信事業者との共同研究 中国 中国語 200 時間以上 + 数億文字 通話音声と転写テキスト
2 同上(テキスト特化) 中国 中国語 千万文字規模 テキスト分類データ
3 英語圏詐欺通話録音(研究用) 米国/国際 英語 200 時間以上 + 数億文字 通話録音と研究用ラベル
4 米国連邦政府機関 米国 英語 十数時間 公的記録データ
5 大手半導体企業 国際 英語 数十時間 音声評価データ
6 実際の詐欺犯との通信記録 国際 英語 数百通 / 数千万文字 長年蓄積した一次資料
7 日本の法執行機関(5 機関) 日本各地 日本語 数時間 + 数万文字 法執行機関由来の複数形式データ
8 AI 安全性研究(大手テック企業 4 社) 国際 英語 20 億文字以上 安全性評価データ
9 韓国学術研究 韓国 韓国語 数億文字 学術研究データ
10 音声セキュリティ研究 中国/国際 中/英 数億文字 音声セキュリティ研究データ
11 ディープフェイク検出 国際 英語 百万文字規模 検出研究資料

これらのデータは、各国の法執行機関・研究機関への長年にわたる調査と関係構築を通じて体系的に収集したものである。一部のデータは、人身上のリスクを伴う調査活動の中で取得された。

データ資産の詳細につきましては、お問い合わせいただければ管理された環境でお見せすることが可能です。

データ統計ダッシュボード

GenAI Guardian データ資産統計

データ種別統計

データ種別統計

同ワークステーションで実行したファイル種別分析の結果。音声データ 36,962 ファイル / 33.5 GB、テキストデータ 57,428 ファイル / 9.1 GB。合計 108,105 ファイル / 55.5 GB。


7. 将来展望

GenAI Guardian の出発点は、日本の高齢者を特殊詐欺から守ることである。

しかし、本システムの検知対象は特定の手口ではなく、言語を通じた心理的支配の構造そのものである。Token は人間の言語においても AI の言語処理においても最小の構成単位であり、AI が生成するテキストも、人間が話す言葉も、すべて Token の連なりとして処理される。

文脈ベースの Token 検知は、その性質上、以下の方向に適用範囲を拡大しうる。

フェーズ 対象
現在 高齢者特殊詐欺の検知(日本市場)
近未来 AI 生成コンテンツの安全性審査、デジタルヒューマン・ライブ配信の信頼性検証
長期 多言語展開。AI がコミュニケーションに介在する領域が拡大するほど、文脈 Token 検知の適用範囲も拡大する

8. 連絡先

[email protected]


GenAI Guardian — プロジェクト紹介(日本語版) 2026